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西洋医学と東洋医学の知恵を学ぼう
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処方運用ノート2
半夏瀉心湯:半夏、黄芩、乾姜、人参、甘草、大棗、黄連
三黄瀉心湯:大黄、黄連、黄芩
桃核承気湯:桃仁、桂枝、大黄、芒消、甘草
大黄牡丹皮湯:桃仁、牡丹皮、大黄、冬瓜子、芒消
桂枝茯苓丸:桂枝、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬
小青竜湯:麻黄、芍薬、細辛、乾姜、甘草、桂枝、五味子、半夏
五苓散:猪苓、茯苓、沢瀉、白朮、桂枝
猪苓湯:猪苓、茯苓、沢瀉、阿膠、滑石
苓桂朮甘湯:茯苓、桂枝、白朮、甘草
当帰芍薬散:当帰、川芎、芍薬、茯苓、白朮、沢瀉
八味地黄丸:地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂枝、附子
真武湯:茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子
半夏瀉心湯:半夏、黄芩、乾姜、人参、甘草、大棗、黄連
ポイント:乾姜の代わりに生姜、黄連の代わりに柴胡にすると小柴胡湯になる。
言い換えると本方は小柴胡湯に処方が近いからその適応症も稍それに近いのである。
近いのは、作用する部位が心下で、症状が嘔なのである。
小柴胡湯は、胸脇苦満、脇下満だし、本方は心下痞である。
運用:心下部が痞え、嘔または腸鳴する。
心下痞とは胸元が痞えるという自覚症状で、他覚的にこれを証明することはできない。
嘔と腹鳴は相伴うこともあり、一方だけのこともある。
要するに心下に痞えた気が上に動いて嘔になり、腹で動いて腸鳴すると思えばよい。
三黄瀉心湯:大黄、黄連、黄芩
ポイント:黄連、黄芩ともに胸脇心下の鬱熱を瀉すが、黄連は、気上衝煩燥を主治し、黄芩は血熱性を
主治する。大黄は実熱を瀉し、順気の能がある。三者相俟って、心下の鬱熱を解し、充血の
上衝機序を下に誘導する。
運用1:心下部の痞塞感、充血性の上衝、精神不安を治す。
①肉体的に胸元が痞えることを主症状にする胃酸過多症、胃潰瘍、宿酔など
②精神的な胸元の痞えで、晴れやらず、とつおいつ思案に暮れたり、気分が統一されないから気
分が落ち着かず、或はイライラし、或は不安の気分に駆られ、或は決断力なく色々と取捨に迷
い、或は気が移りやすく観念逃走し、年中医者を取り替えたり、あれこれの治療を手当たり次
第に用いたり、気がむらで迷いが多い。これを心気不定とも心気不足とも表現する。
③心気不足と共に充血性の上衝があるから、興奮しやすく、すぐにかっとなり、しかもそれが長
続きしない。いわゆるお天気屋である。必ずしも怒るとは限らず、或は泣き、或は笑う。
顔面は、紅潮充血する傾きが多い。
顔面紅潮、のぼせ感があり、脉大、便秘勝ちのもので、高血圧症、動脈硬化症、脳溢血、脳充
血、てんかん、発狂、打撲、やけど、耳鳴り、眩暈、肩こり、歯痛、酒サ鼻、眼病、皮膚病な
どに応用される。
運用2:各種の充血性出血に用いる。
吐血、喀血、鼻血、歯根出血、脳溢血、結膜出血、子宮出血、痔出血、皮下出血、外傷等によ
い。脉大きく、出血に対して不安がる傾向あり。
桃核承気湯:桃仁、桂枝、大黄、芒消、甘草
ポイント:桃仁は、実証の循環障害を治し、大黄、芒消は、これを助け瀉下する。桂枝、甘草は、気の
上衝を治す。故に、上部に於て気上衝による神経症状があり、下部及び体表に於て鬱血性の
循環障害症状が見られる。上衝が強いので、下剤で誘導する。
運用1:実証鬱血性体質で神経症状を呈する。頭部がのぼせて足が冷える。
実証だから、体格も良く、筋肉も引きしまり、脉も緊張よく、浮も沈もある。
但し、稀に、一見虚証らしく見えても局所の実で本方のものあり。脉は緊である。
望診上、鬱血性であるのが特徴。
顔色赤黒く、口唇、歯根、時には舌までチアノーゼ様に暗赤色ないし暗紫色。皮膚もその傾向
あり。
運用2:実証の下部循環障害。脉は沈緊である。
運用3:実証の皮膚鬱血
運用4:実証ののぼせ
のぼせる感じはあっても顔面は紅潮せず、頬がほてることはない。
顔面、皮膚には鬱血がみられる。(顔面紅潮するのは、瀉心湯、桂麻各半湯)
運用5:実証の鬱血症状に伴う浮腫
大黄牡丹皮湯:桃仁、牡丹皮、大黄、冬瓜子、芒消
ポイント:化膿によって起った炎症に対して、循環障害を除くことによって、消炎作用を呈する。
運用 :実証で脉も緊張性。下腹部が自覚的に痞え、自覚的或は他覚的に腫れて疼痛、圧痛がある。
発熱汗出悪寒するのは、化膿機転があるからで、脉遅緊のものは本方。
脉が洪数なのは、化膿症状が完成し、虚証になっているので、本方は禁。
必ず、脉遅緊の時のみ使用のこと。
桂枝茯苓丸:桂枝、茯苓、牡丹皮、桃仁、芍薬
ポイント:桂枝、茯苓は、気の上衝と腹部大動脉の亢進を調整する。
牡丹皮、桃仁は、実証の循環障害を調整する。芍薬は、血滞を調整する。
実証の循環障害、又は、上衝するものを治す。
運用1:実証で下部鬱血、上部充血があって、神経症状を訴える。
それほどがっちりしていない、普通以上の体格体質と思えばよい。
上部では、のぼせ、眩暈、肩こり、頭痛などを訴え、下部では、足がやや冷え勝
運用2:実証で下部に循環障害あるもの。
実証だから、脉の緊張は良く、表証はなく、裏に病があるのだから、浮にはならず、沈又は、
それに近いのが原則。
上部に於て、各種の神経症状があり、下部と体表に於て鬱血性の循環障害が見られる。
小青竜湯:麻黄、芍薬、細辛、乾姜、甘草、桂枝、五味子、半夏
ポイント:桂枝湯を基本としたもの。桂枝と麻黄があるから表証。
乾姜や細辛の温薬があるから上または中部に寒があり、五味子、半夏があるから、水と気の
上衝がある。
麻黄細辛乾生姜半夏は心下或いは胸中に停水がある。
従って、小青竜湯の証というものは裏水(心下又は胸中に)があってそれが上衝して表に及
ぶか、もしくは、表熱によって水気上衝を起こすかである。
運用1:発熱症状があって喘咳を伴うもの
太陽病中篇に「傷寒、表解せず、心下に水気あり、乾嘔発熱し、而して欬し、あるいは喝し、
あるいは利し、あるいは曀し、あるいは小便不利少腹満し、あるいは喘するもの」
表解せずであるから、発熱悪寒あるいは悪風頭痛脉浮数などがある。
この表熱によって裏気の上衝を起し、素質的にある心下の水気を上衝させあるいは表に浮泛さ
せる。
乾嘔は、気の上衝により、欬喘は水と気の上衝により、渇は心下に水が停滞して口咽への分布
が不順であるのと熱によって乾くのとを兼ねており、利は心下の水が下って不利になったと解
釈され、小便不利少腹満は水が心下に偏在して小便になって出て行きにくいのと、且つ小便は
気が下がるにつれて出るものだから、その気が下がらずに反って上衝している今の場合にはな
さら小便は減ってくる。
小便が不利するから下腹部が膨満感を起すようになる。
この条文は小青龍湯使用の第1眼目でもあり、実際にこの条文に従って応用していくことが一
番多い。
なお、この条文の要点を挙げたのが「傷寒、心下に水気あり、欬して微喘、発熱し、喝せず。
湯を服し己りて喝するものはこれ寒去りて解せんと欲するなり」(太陽病中)で、小青龍湯証
には裏に寒がある(前述)が細辛乾姜のような温薬で温めてその寒を除くと寒は去り、熱を帯び
てきて熱のために喝を生じるようになる。
寒去り解せんと欲すとはそれを云ったものだ。
以上の適応症状の内で表熱症状と、喘咳に使うことが最も多い。
咳は湿った咳でゼイゼイぜこぜこヒューヒューのごとき喘鳴を伴うのが普通で、決して空咳の
ことはない。
また、事実、気管支喘息のように呼吸困難喘鳴咳嗽の時にも使う。
痰は唾のように薄くて量が多い傾向がある。非常に濃い痰やあるいは膿性の痰には本方は向か
ない。
発熱症状と喘咳のあるものとして急性気管支炎、急性肺炎、感冒兼気管支喘息、百日咳、湿性
肋膜炎、肺結核(めったに使わないが)などに応用する。
運用2:熱や発熱症状がなくても水気上衝に使う。
喘咳その他が表熱によるものではなく自発性に水気上衝を起したと解釈される場合で「欬逆倚
息、臥すことを得ざるもの」(金匱要略痰飲)もその1つである。倚息は、よりかかって座る
意味だから普通に横臥ができず呼吸が苦しいので座っていることである。気管支喘息、肺気腫
などに応用される。
「婦人涎沫を吐す。医反ってこれを下し、心下即ち痞す。まさにまずその涎沫を吐すを治すべ
し」(金匱要略婦人雑病)も水気上衝の例だが、この状の意味は涎沫は唾または胃液が口に出て
くるもので胃が冷え水が停滞している時に起る様態と考えられる。
胃が冷えているのは、温め補力すべきなのに反対に下すと胃は益虚冷に陥り、そのために心下
部が気痞を起し痞える感じを現わす。このときはまず、小青龍湯の乾姜で胃冷を温め水気上衝
の涎沫を治しておき、涎沫が止み、胃冷が回復したところで瀉心湯で心下の痞えを治すのが順
序であるとの意である。
婦人でなくとも唾の多い人、涎、酸っぱい胃液が口に出るものなどに本文を使い得るのであっ
て、これを応用して唾液分泌過多症、回虫による唾液過多、胃酸過多症による生唾の多いもの
などを小青龍湯で治すことができる。
運用3:水気が体表にあふれ、浮腫、疼重、分泌などを生じたときに使う。
心下の水気が上に昇らずに体表にあふれていく場合で金匱要略痰飲病に「病、溢飲の者は当に
その汗を発すべし」というのがそれである。溢飲とは同書に「飲水流行四肢に帰し、まさに汗
出づべくして汗出でず身体疼重す。これを溢陰という。」と定義しているのを参照する。
これにより、腎臓炎、ネフローゼその他の浮腫に小青龍湯を使うが、発熱有無には関しない。
ただし脉が浮弱であることを要する。発熱があれば脉は浮弱数になり、無熱なら浮弱だけであ
る。浮腫には非常に多くの処方を使い分ける必要がある。
運用4:その他心下水気ありを留飲として留飲症状に使うことがある。
それは金匱要略痰飲病に「それ心下に留飲あれば、其の人背寒冷すること手大のごとし。」背
中で手掌大のの部分に冷感を訴えるのが目標になる。胃病ばかりでなくこれは各種の病にも応
用できる。背中が冷えるというものに附子湯も白虎加人参湯もあるが、それらは、範囲が広く
かつ部位が不定だが、小青龍湯では、概して第6から10胸椎の高さの間で限局性にそれを感
じる。
「留飲の者は、胸下痛み、缼盆に引き、欬嗽するときはすなわち轍ち巳む」季肋部、季肋下
部、側胸部等が痛み、それが盆のくぼに放散し、欬をすると痛みが止まるというのだが、一書
には、己むを転じ甚だしとなっている。そういう場合もあり得ると思う。
浅田宗伯先生の方凾口訳に「胸痛頭疼悪寒汗出るに発汗剤を与えること禁法なれども咳して汗
ある症にやはり小青龍にて押し通す症あり(中略)一老医の伝にこの場合の汗は、必ず臭気しを
一徴とすべし」というのもこの場合の応用とみてよいであろう。
五苓散:猪苓、茯苓、沢瀉、白朮、桂枝
ポイント:桂枝は、表証または上衝を治す 。
他は、全て利水剤なので、停水があり、水分の分配障害によって、水は、胃内に停滞し、上
部に欠乏して渇となり、下に出ずして小便不利となり、表に浮かべば浮腫となる。
上衝に伴い、嘔吐となったり、臍下悸となり、熱を伴えば頭痛発熱となる。
運用1:煩渇、尿利減少、或は吐し、或は下るもの
いくら飲んでもきりのない渇を覚える。小便不利は、尿量減少が多い。
吐は、ゲエゲエ苦しく吐くことは少なく、割合楽にスーッと胃内容が多量に出ることが多い。
下痢は、水様便が多量に出る。
運用2:眩暈や心悸亢進を目標にする
猪苓湯:猪苓、茯苓、沢瀉、阿膠、滑石
ポイント:猪苓、茯苓、沢瀉は、皆、利水剤である。
猪苓は、ただ尿利を通じるだけ、茯苓は、心熱を冷まして鎮静作用あり、沢瀉は、頭に迫る
上衝を鎮める。
阿膠は、血燥をゆるめ、滑石は、尿利を円滑にする。
猪苓湯は、熱があっても、亡陽の証だから、利尿に過ぎてはいけないので、阿膠をもって血
燥を予防し、滑石を持って、熱を去り尿利を良くするとの意味である。
運用1:排尿困難または頻尿
排尿困難、頻尿、排尿痛など、膀胱炎のような症状に使うことが多い。
熱もあり、血尿があってもよろしい。脉浮にして緊、咽燥口苦、腹満して喘し、発熱汗出で悪
寒せず、反って悪熱し、身重し。熱病で熱のために咽が乾き、飲んだ水は一時には小便へ出尽
せずに溜り、併かも熱は上の燥渇を潤し、下の湿熱を取る薬である。
運用2:下血
血熱症状を伴っていなければ効かない。
子宮出血は、水血倶に結して、血室に在りと解釈されるもので、小便不利、或は渇、或は下腹
痛、或は月経困難、或は心煩不眠等の煩の症状をともなう。
運用3:下痢
小便へ出ない水分が大便へ廻ったとすれば下痢になる。
運用4:浮腫
運用5:不眠症
苓桂朮甘湯:茯苓、桂枝、白朮、甘草
ポイント:五苓散の原方と考えられるものだが、五苓散は停水を主治し、苓桂朮甘湯は、気上衝を主と
する。
運用 :虚証で息切れ、動悸、めまいするもの。
・「心下に痰飲あり、胸脇支満(支:水をともなう気のつかえ)、目眩するもの」 参考:痞
(つかえ)は、気のつかえ
・「それ短気、微飲あり、まさに小便よりこれを去るべし」
短気:胸脇苦満が原因で起る息切れ 微飲:軽微な停水
・本方は、大体虚証の体質で、貧血性だがひどい冷え症ではない。
・脉は、沈緊を定型的とするが、それに縛られず、沈のことも、細のこともある。
・眩暈を目標に、その原因が胃性、循環系性、耳性、眼性等の如何を問わず使うが、心下部拍
水音があるとか、心悸亢進をともなうとかがあればよい。
当帰芍薬散:当帰、川芎、芍薬、茯苓、白朮、沢瀉
ポイント:当帰、川芎は、循環障害(血証)。茯苓、白朮、沢瀉は、水分代謝障害(水証)。芍薬は、補力
の薬で、当帰芍薬散は、血・水証で虚証の方剤といえる。血証は下腹部に、水証は心下部に
病変の主体がある。
運用1:虚証、貧血性、冷え性の人で神経症状を訴える
当帰芍薬散の人の特徴
①血色が悪い:色が生白いというのではなく、蒼味がかり、黒味を帯びているような血色で、
色艶がない。乾燥気味でありながら水っぽいようなたるんだ肌。
②冷え性であることは、時候につりあわない厚着をしていたり、襟元をきつくし、衣服をしっ
かりと身に着ける。春はいつまでも冬支度、秋は早くも冬支度といった具合。風に当たるこ
とを好まない。扇風機がダメ。
③虚証であることは、何となく活気がなく、疲れたような目、物腰、声も低く、或は細く、ゆ
っくり短く切って話す。
時には、反対に高い調子で、早口に話す人もまれだがいる。
じっとしていて、余り動かない。時に、一つの姿勢を長く保つことが出来ず、姿勢を変え
る。その際、何かにもたれる、腕や膝を組む、前こごみでそらすことない。
④歩き方も物静かで、足音も低く、歩幅も狭い。
⑤訴えは、一言で言うと、取りとめのない、何処がどうと言うことのないような訴えで、しか
も、訴える数が多く、あとからあとから訴えが出てくる。
運用2:月経障害
運用3:貧血性鬱血性の循環障害
運用4:虚証の浮腫:脉沈弱、小便自利
運用5:下腹痛:病理的には、局所貧血性と水分過剰によって起る。
運用6:その他:心悸亢進、浮腫、心臓弁膜症、虚証のいぼ
八味地黄丸:地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂枝、附子
ポイント:地黄、牡丹皮は、循環障害(血証)
沢瀉、茯苓は、水分代謝障害(水証)
山薬、山茱萸は、下虚に
桂枝は、気剤で、茯苓とともに、気動短気を治す、又、桃仁、地黄と共に血行を促す。
附子は、虚寒症を温補する。
以上より、八味丸は、下虚して気動上衝し、下虚に伴う循環障害(血証)があり、下虚によ
る水分代謝障害(水証)があるものと理解される。
具体的症状で説明すると、下虚とは、腰仙髄断区の無力状態で、下腹部筋肉の緊張や泌尿生
殖器の緊張が弛緩性になり、或は、下肢下腹部に知覚麻痺、運動麻痺を起し、小便は脱漏的
に多尿になる。但し、この反対に、仮性の緊張、
即ち、実際には、無力性でありながら、現象的には、下腹部が緊張したり、尿利が減少した
り、腰が痛んだりする。
下虚になる3つの症状
①尿利の変化と著明な口渇(水証と血証から)
②下虚による気の上衝からくる、腹部大動脈の亢進、呼吸促迫、吐血(気衝)
③はげしい口渇、吐血、血熱(毛細血管の鬱滞による血液粘度上昇)、皮膚掻痒症、副腎皮質ホルモン
障害による皮膚や舌にメラニン色素沈着による黒ずみ、インポテンツ
運用1:口渇著明、尿利増加(どちらも顕著である)
八味丸の人は、痩せた人は、貧血性で脉が沈んで弱い傾向あり。肥えた人は、色が浅黒く、脉
が大きく硬い傾向あり。
運用2:腰痛、下腹部腹筋緊張、小便不利するもの
運用3:下腹部軟弱や麻痺性のもの
運用4:浮腫があり、口渇、利尿減少するもの
運用5:皮膚や四肢が煩熱するもの
運用6:呼吸促迫し、小便不利するもの
運用7:吐血し、口渇、小便が不和又は、自利するもの
運用8:難聴で、口渇、尿利異常等あるもの
運用9:視力障害があって、運用1~5のあるもの
真武湯:茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子
ポイント:茯苓は停水を去り鎮静を兼ね、白朮はおそらくは分泌中枢に働いて停水を動かし、生姜は駆
水と気上衝を沈め、芍薬は筋緊張を補力し、附子は温補を兼ねているから、真武湯の適応症
は虚寒で停水を兼ね、気衝を現わす時に用いられることが察しられる。
温補が主になって、虚熱を治し、あるいは駆水が主になって胃内停水下痢浮腫を利尿し、あ
るいは気動上衝の悸、目眩、運動失調等を治す。
運用1:自覚症状の少ない発熱症状
他覚的は高熱があるのに自覚的にはほとんど熱感がなく、平気で外出もし、熱のわりに顔が赤
くならず、脉は浮弱数を呈する。普通の感冒でもその他の急性伝染性熱病でもしばしば遭遇す
るところである。
脉が浮弱数であっても頭痛や寒気を多く訴えるものは桂枝人参湯である。
運用2:虚寒証の心悸亢進、眩暈または運動失調
虚証の状態で寒証はあまり目立たなくても脉が沈か沈弱で心悸亢進したり眩暈したりするも
の、あるいは両者を兼ねるのに良い。この症状は、熱病を発汗した後で起こることもあり、発
汗をせずにも起こることがあり、無熱でも胃性眩暈、貧血に伴う眩暈、高血圧症でありながら
脉が弱くてめまいするものなどに用いる。苓桂朮甘湯は脉沈緊だから区別される。
運動失調は漢方では眩暈と同様に取り扱ってよく、めまいがしてたっていられないあるいは歩
けないよろめく、立っているとふらふらする、つまづきやすいなどの場合に用いる。
運用3:虚証の下痢
水様便または泥状便でも水分が多く、尿利減少、ときには腹部に鈍痛を訴えることもある。排
便後脱力感でがっくりするものが多い。貧血性で足が冷える方、腹鳴等はなく、腹部は柔らか
く、胃部に振水音を認めることがある。
運用4:浮腫または体表の滲出性漏出性疾患
虚証の浮腫だから押して軟かく弾力がなく、押した跡がすぐに持ち上がってこない。
皮膚は蒼白くたるんでブヨブヨな感じがする。或は小便不利、或は心悸亢進する。
心臓病でも腎臓病でも使って良い。この浮腫を浸出に転用して湿疹などの皮膚病、潰瘍などに
本方を使う。分泌が薄くて多い。
創面は貧血性で肉芽不良である。その局所的所見と全身状態、脉を見合わせて本方の指示を確
かめる。