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呼吸を意識しよう-腹式呼吸のすすめ

 

毎日、さまざまなストレスにさらされる現代。

そこでお奨めが、東洋で古くから健康法のひとつとして知られている「腹式呼吸」です。

心身の調子を整えるといわれ、とくにそのリラクゼーション効果が注目されています。

しかも「腹式呼吸」は形式にこだわらなければ、いたって簡単な健康法といえます。

 

心と身体の状態をあらわす呼吸

 

“息がつまる”“息をのむ”“息抜き”など、心身の状態と呼吸(息)が結びついて出来た言葉がたくさんあります。驚きや怒りで感情が高ぶると呼吸が早く息苦しくなり、身体も緊張にガチガチになってしまいます。反対に気持ちが落ち着いていると、呼吸もゆったりとし身体もラクになるものです。

つまり、心の有り様と身体と呼吸は非常に密接な関係にあるのです。

このことは見方を変えれば、呼吸をコントロールすることで心身の状態を整えることができるということにつながります。

この呼吸のコントロールを取り入れている東洋の健康術がヨガ、太極拳、気功などといえます。 

 

私たちが通常行っている呼吸は胸式呼吸といい、主に胸郭の中にある肋間筋の運動により行われます。

一方、腹式呼吸は、お腹をふくらませて息を吸い込み、お腹を引っ込ませて息を吐き出しますが、実際は横隔膜の上下運動による呼吸のことで、横隔膜呼吸とも呼ばれています。 

 

心身のバランスをとり、冷え性や不眠にも効果

 

腹式呼吸を行うと横隔膜の運動範囲が広がり、人によっては胸式呼吸時の3~4倍になることもあるそうです。腹腔の内圧もグンとアップし、その刺激を受けて胃腸の働きが活発になり、消化機能が改善されます。また腹筋も鍛えられるので、腰痛予防にも役立ちます。

その他、停滞していた静脈の血液の流れもよくなり、冷え性にも効果的と考えられます。

 

健康な人は交感神経と副交感神経のバランスが保たれていますが、ストレスなどでそのバランスが崩れると自律神経が乱れ、動悸、めまい、頭痛などさまざまな症状が現れます。

その自律神経をコントロールすることにも腹式呼吸が役に立つといわれます。

人の身体は筋肉が動くと筋肉内のセンサーからその刺激が脳へ送られます。横隔膜もそうしたセンサーを備え、深く大きな呼吸で横隔膜が動くとその刺激が大脳へ送られ、さらにそれが視床下部へ伝達されます。視床下部は自律神経と深く関わりのあるところですが、その刺激により、自律神経が調整されると考えられています。

つまり、腹式呼吸により心身の調子が整えられ、心身ともにリラックスすることが出来るのです。

ホルモンの関係などで自律神経が乱れやすい女性には、とくにお奨めです。これを日課として以来、便秘と不眠が改善された方もいらっしゃいます。 

 

呼吸を意識することは、自分をみつめること

 

腹式呼吸にもいろいろな流派があり、それぞれ、それを習得し、ある程度の効果を得るにはやはり時間と根気が要ります。でもまずは、「手軽にできる方法があれば…」といった方のために、初めてでも出来る呼吸法があります。

 

はじめての場合は座って行います。立ったままでも横になった状態でも実は構わないのですが、座った姿勢がもっとも下腹を意識することができるのです。はじめのうちは目を閉じながら、下腹を意識して呼吸します。この時、下腹に片手を置くと行いやすくなります。呼吸は自然呼吸でOKです。

 

(1) 「背筋を伸ばして、アゴを少し持ち上げて…」など技法にこだわりすぎると、かえって身体に力が入って

  しまい本来の呼吸法が出来なくなります。そんな時は無理に身体の力を抜こうとせず、精神を集中し、自

  分を見つめる(内観:具体的には身体の内部を見つめる)という感覚を持つことが大切です。

 

(2) 次に頭のてっぺんを天に引っ張られるような意識を持ちます。そうすることで自然と背筋が伸びます。

 

(3) その状態のまま今度は、おへその下あたりにある丹田(たんでん)を意識します。丹田は東洋医学におい

  て、エネルギーの源である“気”が集まるといわれる重要なツボのひとつです。まず自分を見つめるという

  感覚を持ち、さらに丹田に意識をもっていくことで、自然と身体の力が抜けていきます。

 

(4) 次にふだん無意識に行っている呼吸を、“吸って吐いて”を意識します。この時にノドや鼻を意識しがちで

  すが、あくまでも気持ちは丹田に置きながら行います。深くゆったりと呼吸し、吸う時も吐く時も遠くを

  意識して吸い切り、吐き切るようにします。それを繰り返し行います。

 

ポイントは、吐く息を意識して全部吐き切ることです。そうすることで、身体の中の不要な呼気が排出され、その代わりに酸素の多い空気が意識せず、自然に取り込まれます。ただし、きれいな空気のところにいることが条件ですが…

 

電車の中やお休み前のひと時に

 

わざわざ時間を作って行うのは面倒という方にお奨めなのが、お休み前のひと時を利用することです。

呼吸法は本来、座って行うのがベストですが、布団の中で仰向けになった状態でエッセンシャルオイルのラベンダーを漂わせながら、広い空間に身をゆだねるような感覚で行うのも、次第に身体が暖まり気持ちがシーンと落ち着いていいものです。もともと寝つきのよくない方も、そのままスーッと眠りにつくことができるようです。

時間は一日15分くらいが基本ですが、いざ15分間続けるとなると意外と長いものです。ですから時間や姿勢にはあまりこだわらず、電車の中やくつろぎタイムに、また音楽をかけながらなど、まずはやってみようと思った時に好きなように行ってみましょう。

 

腹式呼吸の効果

 

生体が生き続けてゆく為には、体細胞はエネルギーを必要とします。そのエネルギー源の主なるものは血液内のブドウ糖(血糖)です。60兆といわれる体細胞はエネルギーを得る為に血糖を細胞内へ摂り入れ分解します。その分解産物は最終的には水(HO)と二酸化炭素(CO)になり、このうち水は体内で利用価値があり、多くなれば尿あるいは汗となって体外へ排除されます。

一方、血中の二酸化炭素は、肺というガス交換装置を用いて体外へ排除されるべきものであるのですが、当然体外へ出るべき二酸化炭素は浅い呼吸のため血液内に停滞すると、血中の二酸化炭素は水と結合して炭酸となります。この炭酸(H2CO3)は、血液を酸性化してしまいます。

CO2+H2O → H2CO3 → H++HCO3

健康体での血液は弱アルカリ性ですから、酸性化するということは、体は不健全な方へ傾いていく事になります。このように、肺のガス交換をスムーズに実行するためにも、腹式呼吸の意義があります。

 

腹式呼吸は横隔膜と大きなかかわりを持っています。呼吸筋としての横隔膜は肺のガス交換に重要な役割を演じていると共に、心臓に対しても驚くべき効果を発揮します。

心臓の働きで最も重要な事は、栄養分と酸素を多く含んだ血液を全身の体細胞に送り届ける事で、その為には使用済みの汚れた血液をかき集め肺に送らなければならないのですが、その静脈血に対して横隔膜の運動は、もっぱら静脈血ポンプとして働き、心臓を助けています。

人間は一日に7,200リットルの血液を必要とします。ドラム缶にして36本分です。

心臓は昼夜休まず血液を送り続けていますが製造する場所ではないので送り出す分を、かき集めなければいけません。

運動して体を動かせば静脈血が心臓へ還りやすくなりますが、横隔膜は腹腔内の静脈血を心臓へ送り届けるのを助けます。

横隔膜の活発な動きは、心臓自体のマッサージをも行ない、冠血流を活発にします。したがって、一生休みなく働き続ける心臓を補助する為にも呼吸を見直すことは、たいへん良いことです。

 

世の中には、気分転換の上手な人とそうでない人がいますが、努力次第では上手になる事は不可能ではない、と断言できます。

不安、心配、恐怖といったものは人生には付きものですが、それらによって心が占拠されると、呼吸もまた浅く、弱く、力の無いものとなりがちです。そのような呼吸が続くと、生体を構成している細胞の生命力を低下させる事になります。健康に生活する為には全身の細胞のバイタリティーを高めてやる事が必要です。息を長く吐く事は、雑念妄想を脱落させる不思議な力も持っています。

同時に不安、心配も次第に処理されていきます。

下腹部に自然に腹圧がかかり、腹腔内にある太陽神経叢をはじめ4つほどある自律神経叢が、調整されていきます。

従って、正しい呼吸法を行うことは、諸病克服のみならず、それらを未然に防ぐ事も可能となり、人それぞれの人生に間違いなく多大な貢献をすることでしょう。ぜひ、毎日実践いたしましょう。

 

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